2009年10月7日水曜日

読む人のこと


ブログってセラピーみたいなものでしょ?自分話を聞いて欲しい、という。
私ならプロのセラピーに聞いてもらうわ(笑)

キャメロン・ディアス 「TOKYOニュースREMIX <新>「ブログ社会」」 NHK総合 10/6放送分 大意要約


至言である。

セラピーにかける手間と金があって、しかもほっといても始終注目されている一流ハリウッド女優なら、(少なくとも日本社会で流行しているような)ブログは必要ないのだろう。
同番組に、ブロガー芸能人代表で出演していた矢口真里(元モ)が、ブログをすすめる言葉として言い放った「仕事が増えます!」発言も、併せて賞翫したい。

ブログに限らず、ネットで発言すると言うことはどういうことなのか、ということ。
なぜかブログというのはきわめて個人的なメディアだと思われている節があるが、ブログというのは特に規制を設けないかぎり、世界中に向けて発信されているのだ。日本の一般人のブログをチェックし回っているアメリカ人や中国人は少ないかもしれないが、日本人口一億数千万に公開されていると思っただけでも相当である。購買層が特定されるような雑誌や同人誌にむけて書くのとは、訳が違う。

以前、ある文芸批評家がブログ上で、ミクシィで文章を公開している人たちが「テレビに出ている人間のつもり」で発言に気を遣っている、と冷笑交じりに指摘していた。
ミクシィのような参加型コミュニティなら、そこまで気を遣うこともないと思うが、たとえばブログというのは上記のように圧倒的な多数にむけて公開されているのであり、あまり自分がこだわっていないことに「テレビなみに」気をつけて発言するのは、悪いことではないのではないか。もちろん、マスメディアの規制にとらわれず、自分が主張したいことを自由に主張できるのがネットのよさなのではあろうが、だからといって公開の場で、自宅や居酒屋のように放言が許されるわけではないと思う。



と、のっけから当たり前の公衆道徳を復習してしまったけど、今回の主眼はそんなことではなくて、とても興味深い、次のような発言を紹介したかったのである。
掲載元は、朝日新聞夕刊関西版10月7日掲載のエッセイ「私の収穫」。
全国版なのかどうか知らないが、この欄は著名な文化人が全四回で短いエッセイを連載している。これまで、中沢新一氏、岡井隆氏、辻惟雄氏、などと続いて、先日からは長谷川櫂氏が登場した。
その、第一回の表題が、「俳句はなぜ短いか」で、当然、非常に興味を持って読み始めたのである。
そして、……茫然とした。

長谷川氏は、「俳句は十七音しかない、世界でいちばん短い定型詩である」と、よく聞かれるフレーズで語りはじめ「この俳句が、中国やヨーロッパやアメリカではなく、なぜ日本で生まれたのか」と自問する。
そして、『徒然草』の著名な、「家の作りやうは、夏をむねとすべし」(第五十五段)を引用し、

日本の夏はただ暑いだけでなく、蒸し暑い。そんな国で多くの言葉を使っていたのでは暑苦しい。そこで言葉を最小限に切りつめた俳句が誕生した。俳句が日本で生まれたのは蒸し暑い夏のおかげということになる。

と結論づけるのである。長谷川氏のエッセイは、以下のようにまとめられる。

建築にしてもデザインにしても日本文化はシンプルであるといわれる。では、なぜシンプルなのかとなると、日本人はシンプルが隙なのだという理由にもならない理由で片付けられてきた。/ このシンプルな文化もまた日本の夏の賜物だろう。あまりに蒸し暑いと、ごちゃごちゃしたものは煩わしくてやりきれない。そこで日本人はすっきりしいた生活や文化を編み出してきた。/ 日本の夏は蒸し暑くて耐え難いが、だからこそ日本文化の生みの母でもある。その一つが、俳句。わかってみると、いたって単純明快な話である。

ちなみに引用部分に関しては、中略していない。

なんというか、実に超論理であって……(わかってみると」あたりが、特に凄い)……、度肝を抜かれた。

現代を代表する(と目される)俳句作家で評論家でもある長谷川櫂氏が、エッセイの読者層をどのように意識されたのか、私には知るすべもないが、いくら購買者が減っているとはいえ大手新聞掲載のコラムである。長谷川氏の、現在の公式見解ととって、相違あるまい。

今後、エッセイの行方が気になるところでは、ある。



読者層、ということでふと思いついて、いま俳句を特集している『サライ』のバックナンバーを調べてみた。
 →
http://serai.jp/

ざっと見た結果なので見落としたかも知れないが、どうも『サライ』が「俳句」を特集したのは今回が初めてのようだ。(2008年9月号「奥の細道」特集はあり)
俳句読者の拡充、ということを考えると、現実的には、『サライ』や『和楽』読者あたり(日本文化に興味があってゆとりのある中高年男女)が一番のターゲットになるのだろう。
あとは、以前ちょっと触れたように『文藝』や、『ユリイカ』読者あたりだろうか。川上弘美は両誌ともに特集されたことがあるが、知る限りでは俳人の特集はまだない。
『ユリイカ』の特集で摂津幸彦や加藤郁乎、あるいは夏石番矢など、是非読んでみたいものだ。

いや、もちろん、『BRUTUS』が俳句特集を組む日が来ても、全然あり、ていうか歓迎、なんですが、そうしたら一度も手に取ったことのない『BRUTUS』を手に取らなくてはならなくなる。 その場合誰がフューチャーされているかが問題なのだが……今のところ、候補は思いつかない。

   

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