2010年3月31日水曜日

芝不器男新人賞一次予選

 
第3回芝不器男俳句新人賞 選考経過
 

ダメでした。ちなみに私の番号は89番。一瞬、喜びかけた。

予選通過の方、おめでとうございます。

2010年3月29日月曜日

キャスティング(3)


ここ十数年、若手俳人を特集したアンソロジーはほとんどなかった。
しかし、ここ数年総合誌の年鑑や各俳句雑誌では若手が注目されていたし、「俳句甲子園」、「芝不器男賞」「鬼貫新人賞」など若手奨励の大きな賞も目立っていた。従って、若手発掘の気運は充分に高まっていた。そんななかに生まれたのが、『新撰21』であった。
ここではまず、新撰組21人を、ヤジ馬的な立場で三つのグループに分けてみる。

・Aグループ、すでに大きな新人賞などを受賞しており、句歴・実力・知名度の高い人々。
・Bグループ、「俳句甲子園」出身の学生俳人や、総合誌の「若手特集」などで取り上げられることの多い、「若手俳人」たち。
・Cグループ、所属する結社やグループで評価の高い、注目の若手。

Aグループは、鴇田智哉、田中亜美、冨田拓也、高柳克弘、神野紗希氏ら。受賞こそ前後したが、相子智恵、佐藤文香氏も含んで良いかもしれない。

Bグループは、越智友亮、藤田哲史、山口優夢、谷雄介氏といった「俳句甲子園」組に、中本真人、村上鞆彦氏。比較的年長だが北大路翼氏といった人々を加えられる。

Cグループは、これは私の不勉強のせいもあるが、『新撰21』で初めてまとまった作品を読むことのできた人たち。ネットや年鑑で名前だけは知っていた、関悦史、中村安伸、豊里友行、五十嵐義知、外山一機氏ら。まったく未知だった九堂夜想、矢野玲奈氏ら。

こうして見ると、案外バランスよく実力者が取り上げられていることがわかる。

Aグループの人たちは、アンソロジー以前に名の知れた人たちでもある。もしも「発見!若き俳人たち」という帯の惹句が期待はずれだった……、という感想を持った人がいるとすれば、Aグループの人たちがおさまりすぎていたからだろうが、これはちょっと欲張りな要求で、誰が欠けても文句の出る名前ではある。

Bグループは、ちょっと問題がある。全員が東京在住人であることだ。関西出身で東京の大学へ進んだ越智を別にしても、東京の学生句会に出入りしているメンバーばかりである。竟宴において、松本てふこ氏が「東京にいたら会える顔ぶれ」と指摘したのはこの部分である。
関西に限らず、俳句王国・愛媛など、若者の句会は決して東京だけではないはずで、また地方にいるからこそ力を発揮する人も多いはずなのだが、実力者が地方に埋没することなく出やすいようなネットワーク作りができないものか。

Cグループは、一番議論のありそうな部分。今回のメンバーは編者たちにとっては当然ベストな顔ぶれだと自信を持っているはずだし、そう思わせてくれる顔ぶれでもある。しかし本当はそれぞれの結社でそれぞれ推薦したい若手がいるだろうし、誰が何年かかって選んでも「間違いない」選択ができるわけはないから、当たり前のように漏れた逸材は多い。

『新撰21』が特に20代作家を出来る限り取り上げるようにしたために30代作家は若干人数的な圧迫を受けている。『新撰21』に入るべきで、しかし取り上げられなかった(その際の基準は優劣というより、多様性という基準で判断したと私は思っている)30代作家も『超新撰21』に入る資格があると思っている。

筑紫磐井「『超新撰21』を告げる」

とはいっても、筑紫氏らが繰り返し「勅撰集」に擬す発言をすること(「竟宴」とは勅撰集撰進の祝いをさす語だそうな)は、結果的に「優劣」を意識させてしまうと思うのだが。



以前、私に身近な「船団」所属俳人を取り上げて『新撰21』にない方向性を探った。
「船団」がもっとも大切にしている「遊び」の要素が、『新撰21』には比較的薄味だったように思えたからだ。(もちろん遊び心を感じさせる作者はいたが、それぞれの作家にとってone of themでありmajorな面ではなかったように思われる)

取り上げられているメンバーについてだけでも、実は不満はある。
たとえば、高山氏も認めているが、小論執筆者のなかに作品で見たい作家が多かった。
そもそもこの小論執筆者は不思議な人選が多く、同じ結社や俳句サークルに属している比較的近しい人が書いている場合もあれば、まったく面識のない人が書いている場合もあるらしい。たしかにバラエティとしてはおもしろかったし、読み応えのある論が多く、繰り返し言うように「新人」たちの首途に対する見事なはなむけである。
にも関わらず、いくつかはやはり不満が残る。近しいところで言えば、江渡華子や松本てふこ氏は、やはり作品で見たかった作家である。(松本氏の北大路論は間違いなく書中屈指の好論であったが)

ちょっと大胆な提案をすれば、上のAグループのような「自力で有名」な人たちには、小論にまわってもらう可能性はあったかもしれない。
誤解を招くかもしれないが、Aグループの人たちはすでに注目の方々であり、総合誌で取り上げられる機会も多く、百句とはいかないまでもまとまった作品を目にする機会は多い。
一方、BやCグループの作品をまとめて読める機会というのはそうそうない。もっと、そんな人たちのための企画であってもよかった、というのが身勝手なナイモノネダリである。
幸いなことに、Aグループは作品も読み応えがあるが、論を張っても強い人たちが多い。鴇田智哉の村上鞆彦論とか、高柳克弘の北大路翼論とか、どうだろう。あるいは神野紗希の江渡華子論。個人的には、すごく読みたい。



私的、『新撰21』補遺。

・三木基史
1974年生まれ。「樫」所属。第26回現代俳句新人賞。
 少年に滑走路あり大夏野
 馬跳びの最後に冬を跳び越える
 雀の子天下国家を胸で押す
 初対面膝から秋を崩したり   
 オレンジのへそ雑音をとじこめる

・中谷仁美
1979年生まれ。「船団」所属。第1回鬼貫青春俳句大賞受賞。句集『どすこい』
 ふらここは揺れて帰ってこない人
 夏の日の文鎮となり象眠る
 失敬なやつだお前は雲の峰
 琴光喜おしりが勝つと言うて春
 網膜が悲しくなるの九月尽


・十亀わら
1979年愛媛県松山市生まれ。「詩学」「いつき組」。第7回俳句界賞。
 夫眠る躑躅そんなにひかるなよ
 さへづりの本気に近き空の色
 奔放な鼻もてあます花薊
 夜の色を引き込む春の鳥居かな

 


2010年3月24日水曜日

『超新撰21』収録俳人公募


1.応募資格
・2010年1月1日現在50歳未満(U-50)の方(下限は設けません)で
・2000年12月31日までに主要俳句賞受賞歴がなく、
・同じく2000年12月31日までに個人句集上梓のない方
 (『新撰21』入集の21俳人を除く)(『超新撰21』への入集依頼送付者を除く)

2.応募作品
・過去の全作品より100句 (雑誌・句集などへの既発表句、可)
一組   
・応募数は、一人につき一組を限度とします。

3.応募方法
・【必要事項】①本名(ふりがな) ②俳号(ふりがな) ③郵便番号 ④住所 ⑤生年月日  ⑥電話番号 ⑦携帯電話番号 ⑧メールアドレス ⑨所属雑誌 
⑩既刊句集名(刊行年月) ⑪主要受賞歴(受賞年月)
【100句のタイトル】
【100句】
をメール本文に記して
送付先メールアドレス 
younohon@fancy.ocn.ne.jpの邑書林までお送り下さい。
(細目を必ずお読み下さい)

4.応募締切 
・6月20日到着厳守

5.選考方法 
・【100句のタイトル】及び【100句】のみを縦書きで印字して三編者に提出。
・三編者の合議で顕彰作品を決します。

6.選考結果発表 
・6月31日を目処に、公募当選俳人を決し、本人へメールにて通知すると共に、
全応募者へ決定通知をメール送信いたします。
・決定次第、ホームページ「新撰21情報」上に結果を発表いたします。

7.顕彰 
・公募当選者を「セレクション俳人 プラス 『超新撰21』」(仮題)の収録俳人とし、当選100句を同書に掲載いたします。 
・他の『超新撰21』収録俳人と同等の権利義務が与えられます。

8.当選作品の複製権(出版権)・タイトルを含めた当選作品の100句纏めての複製権(出版権)は、邑書林に帰属します。

9.細目
1)失格について
 ・必要事項記載内容に詐称がある場合、その応募者を失格とします。
・他者の作品の盗用が疑われる作品が混入している場合、その応募者を失格とします。

2)主要俳句賞とは ・今回の公募に当り、「主要俳句賞」を次のように規定します。 
俳句団体・俳句総合誌及び公的機関が行った賞のうち、複数句に対する賞(よって、参加なさっている同人誌・結社誌内の賞や、一句に与えられる賞はこの限りではございません。該当の懸念のある方は邑書林へご照会下さい) 
・句集に対する賞は、2000年以前に句集を出しているという時点で資格外となりますので対象外です。
3)応募作品の書き方について
 ・当選作品は、そのまま本に掲載いたしますので、次の基準に準じて下さい。
a.俳句を並べる順は、特に規定しない(編年・季節別・テーマ別など、自由に構成して下さい) 
b.章立てについては、次の条件の中でお考え下さい。 本書はお一人につき11句組10頁が用意されています。即ち100句を110行の中で組むこととなります。章タイトルに一行取るとすると、100句を最大10章に分けることが出来ます。逆に、章立てをしないという選択肢もあります。既刊の『新撰21』を参考に、章立てをお考え下さい。 
c.また、前書き・脚注についても基本的には上記110行の1行と数えます。
ただし例外的措置も可能ですので、既刊の『新撰21』を参照して下さい。 
d.振り仮名(ルビ)はルビを振る漢字の直後に(
)内にお示し下さい。選者への提出時・書籍印刷時には、ルビを漢字の右側へ移動させます。 
e.応募作品はそのままコピーペーストして縦書きのMicrosoft Word文書とします。
 ・字間・行間ともベタとする。   ・作品の左側(行頭)に空白を設けない。   ・作品の左側(行頭)に通し番号や記号などを振らない。  f.多行俳句、分かち書き俳句をお作りの方は、主催者側に判りやすくお書き下さい。
g.多行俳句の場合は、110行に拘らず、あくまで100句のご提出をお願いします。 
 以上のことをお守り下さい。(不明の点は邑書林へご照会下さい)

4)添付メールでの応募 ・Microsoft Word文書 及び・一太郎 で作成された原稿に限り、添付メールでの応募を認めます。

5)当選者からは、当選通知後数日で書籍掲載用に作句信条と略歴(共に30字×7行以内)を頂戴することとなります。書く内容について構想を練っておいていただけると幸いです。

6)その他、不明の点はお気軽に邑書林までご照会下さい。

以 上




……長ッ
ここまでこまかい細目って俳句賞で始めて見たよ。。まぁ「賞」ではないからか。
やっぱり、最終的に「若干名」だけが公募で、ほかに入集依頼されている人と一緒に載るってのは何かビミョーな気がしますが、アンソロジー収録者を「公募」する、ってのはとてもいい思いつきだと思います。
『新撰21』と選者が変わらないのでそのへんどーなのか、と思いますが、「公募」というのはそういう意味でも変化があっていいですね。

2010年3月16日火曜日

古代文学会シンポジウム


2010年度古代文学会シンポジウム+夏期セミナー


     2010年度 古代文学会連続シンポジウム 
総合テーマ  〈型〉のダイナミズム―古代文学の普遍と固有― 
〈型〉は継承されていくなかで新たな創出を果たし、その新たな創出が次には後に継承されていく〈型〉となる。あるいはその継承から創出でという変化そのものを〈型〉とも呼びえよう。そうした〈型〉のダイナミズムを古代文学の世界において追及していくことを企図する。〈型〉という視点から、対立概念ではない普遍と固有の流動変化する在りようを捉える。
日時 2010年4月10日(土)・5月1日(土)・6月5日(土)・7月3日(土)
会場 共立女子大学 本館  地下鉄・神保町駅下車A8出口から徒歩1分、「竹橋」駅下車1b出口から徒歩3分     
→地図

4月10日(土) 14:00~17:00 テーマ「歌の間テキスト性」 
歌とは何か。〈型〉が引き寄せる言葉、〈型〉を創る言葉。
 【パネリスト】穂村弘氏/岡部隆志氏

5月1日(土) 14:00~17:00 テーマ「儀礼と芸能」 
継承でありつつ創りだされる儀式の〈型〉を捉える。
 【パネリスト】兵藤裕巳氏/遠藤耕太郎氏

6月5日(土) 14:00~17:00 テーマ「神話の想像力」 
〈型〉が新たな神話を生み出していく流動的想像力とは。
 【パネリスト】伊藤聡氏/谷口雅博氏

7月3日(土) 14:00~17:00 テーマ「詩的想像力」 
〈型〉はいかにして詩の想像性に関わるのか。 
【パネリスト】
渡辺秀夫氏/太田善之氏

入場無料・会員以外の方も自由に参加できます。

うーん、どうなのかな、このシンポジウム。顔ぶれもテーマもおもしろそうなのだけど、何をどう語り合うのか、ちょっと見えないところがある。 「古代」だしなぁ。

古代文学会の連続シンポジウムというのは毎年ちょっと変わった企画をする。
一度、ファンタジー作家の荻原規子氏と古代文学者の三浦佑之氏との対談という不思議な企画につられて東京まで行ったことがある。おもしろいには違いなかったけれどどうも発展的ではなくて始終「?」がついてまわるシンポジウムだった。
三浦さん自身が荻原さんファンで、周りも荻原さんのファン(通称"オギワラー")の方が多くて(実は同行者もそのうちの一人)、明らかに「学会」関係者でない人たちに会場が占拠されていたのが記憶に残っている。全体に「荻原さんとファンの夕べ」みたいな。
私も結構荻原作品は好きだし、古代専攻でもないので三浦さんと荻原さんの話聞けただけで満足、な感はあったんですが。ちなみに三浦氏は『口語訳 古事記』で大ヒットを飛ばした売れっ子文学者。娘は三浦しをんだったりします。


てなわけで、上の企画もどーゆー内容になるかはわかりません。もし東京の方とか、東京行く用事のある方で、穂村氏に興味のある方は初日だけでもいかがでしょうか。いわゆる「業界」内部ではない視点からのシンポジウムというのもおもしろいと思います。

さすがにわざわざこのためだけで東京遠征もできないので、行って感想など聞かせてくれる人がいれば嬉しいのが本音のところ。
 

2010年3月7日日曜日

京都市地下鉄にて。


俳句と標語

なんて、筑紫磐井さんがとっくに手がけているテーマですね。



  裏側に階段あります春の雨



  三月の裏の階段下るべし


  
  早春の蛇口をひねればすいどうすい
 
   
「週刊俳句150号」は、「まるごと川柳」特集。

実は先日私もはじめて柳人の方々と句座をともにする機会があったのですが、「川柳」というのは「俳句」以上にとらえどころのないものであるなという感じ。そこでも少し話題に出たのは、「川柳」や「俳句」が「標語」に近づいていく、そのことをどう捉えるか、という話題。

別に、近づいても混ざっても全然構わない、というのが私の立場。それで、「おもしろい作品」が読めるのであれば。

ただまぁ言う必要もないことをいえば、「標語」は何か伝え広めるための主張を明確に有しているわけですが、そのあたりを朧化して季語にズラし、具象に託してしまう(のを好む)のは「俳句」的かな、と思います。
「川柳」は違うかも知れません。一般的には、諷刺という「メッセージ」があったり、作者の「思い」を伝えたかったり、もうすこし読者へ伝える意志が明確な印象があります。

とはいえ実際に現代川柳を読ませていただくとそうでもなく、もっと言葉の面白さで勝負している作品も多くあるようです。やっぱり「川柳」は、特に現代川柳はつかみきれないところがある。特集号で湊圭史さんが、川柳とは形式ではなく「場」という言い方をされているのは、その意味でもとても興味深い。
我々、ついつい「短歌」「俳句」「川柳」と並べて、形式とか本質とか考えて比較してしまいますが、もとより土俵とか次元の違う概念だと捉えるべきなのかも知れません。
 

2010年3月5日金曜日

呵々!


やられました!こうきましたかー、って感じ(笑。


『新撰21』では、50歳未満俳人による第二弾『超新撰21』を続編として刊行いたします。ついてはその内若干名を公募することといたしました。画像は3月25日発売の「俳句」4月号掲載広告です。現在、細目をつめていますが、ここにお出掛け下さる皆様に、先行情報としてお知らせ致します。近日中に当板上部に募集要項をupさせて頂きます。なお、
・「新撰21」の21人は対象外
・「超新撰21」に3月内に正式出稿依頼を送らせていただく方々も対象外となります。
・ 年齢の下限はございません。

☆募集作品…過去の作品より代表句100句。
☆応募資格…①1960年1月1日以降生まれの方。 ②2000年12月31日以前に個人句集の出版歴のない方。 ③2000年12月31日以前に主要俳句賞の受賞のない方
☆締め切り…2010年6月20日厳守

http://8548.teacup.com/kyouen/bbs/92

なるほど、これなら「人選」に文句が出ることはなさそうです。
腕に覚えのある人は、自ら応募すればよろしかろうと思いますし、落とされたならばそれはそれで自分の作品と縁のない企画だったことが明確になりますから、すっきりします。
要するに賞とおなじことな訳ですからね。知らないうちに無視されたー!って感情よりはさばさばしてて非常に結構。
まだずいぶん期間もあるようですし、しばらくはこれを目標に楽しめそうですね。

私同様、がたがた文句ぬかしていた連中はことごとく応募するべきでありましょう。
いっそ「若干名」なんて不透明なこと仰らず応募にしてほしいくらいです。

何にせよ、この企画は大賛成。曾呂利亭ではこの企画を全面的に応援します(笑)。