2016年11月25日金曜日

Kuru-Cole 7 木田智美


Kuru-Coleとは?



木田智美(きだ・ともみ)

 一九九三年大阪生まれ。「ふらここ」所属。

キャロラインの部屋には黴びたパンがある
紫陽花ゆれてこねこのトムのおはなし
ピペリカムカリシナムむかし住んだ家
香水や色褪せている孔雀の絵
スジャータのトラックのゆく夏休み
昼寝して見逃すウォーターボーイズ
ブラックサンダーどろどろになる体育館
ライブ後はみんなばらばら沙羅の花
環状線乗り換えアルトコロニーの定理
4人のRADWIMPSがみたかったよ晩夏
コンビニの花火がしょうもなくて笑う
騙しあってきたでしょう月と海ぶどう
パステルカラー錆びて寒露の観覧車
スパイダーマン中肉中背芋煮会
エンドロールは童貞のまま銀杏踏む
漫才師去る足揃う三十三才
映画のなかの雪が本物だったらいい
凍鶴や欠けてケーキの砂糖菓子
いそぎんちゃく四歳の子の髪がきれい

葱の花海ひからせて港町


木田さんは、寒天さんと同い年、吹田東高校出身で龍谷大学卒業生だから中山奈々直属の後輩である。船団の句会や、柿衞文庫での「俳句ラボ」にも初期からよく参加してくれていたので、彼女の句を見る機会は比較的多い。

一言で言って彼女の言語センスは天才的なものがある、と思う。

初期の代表作
 ラズベリータルト晴天でよかった
 月光と血とその他からできている
などは、私の愛唱句である。(彼女の手製句集「シュークリーム」に所収)
また昨年の鬼貫青春大賞では、「しりとり」と題し、「臨機応変なあなたに林檎あげる」「留守番はやねうら部屋で蝙蝠と」「ときめきが足りない南瓜も足りない」・・・という、しりとりで30句連作を完成させるという冒険(結句は「小鳥来る樹の椅子奏でるカノン」)を成し遂げた。音律でいえばかなり無理があるものの、言葉のうえで遊びつくそうという覚悟を買いたい。
今後彼女がどのような俳句を生み出すのかわからないが、内向きに籠もりがちな俳句界にとって、俳句という詩型を超えた言葉の活力を発揮できる稀少な個性といえよう。
小論には、いっそ俳句プロパーではないほうが相応しいだろうと思い、悩んだすえ、気鋭の歌人、土岐友浩氏にお願いすることにした。土岐氏は俳句Gatheringのフォーラムにご参加いただいたときからの縁で、俳句に対してもフラットな視点で接してくれるのでありがたく、ご多忙のなか無理を言ってお願いしてしまった。作家としては歌集『Bootleg』(書肆侃々房)で話題だが、鋭い批評眼の持ち主でもある。お楽しみに。

2016.11.26 誤植訂正。 1992年生まれではなく93年早生まれでした。

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