2016年12月2日金曜日

Kuru-Cole 8 家藤正人


Kuru-Coleとは?




「なぜ」

家藤正人(いえふじ・まさと)

 一九八六年、愛媛県生まれ。「いつき組」所属。南海放送ラジオ「一句一遊」アシスタント。



排気筒ふるはせ野焼見てをりぬ
初夏を乾けピザ釜用の薪
花蜜柑神は荒々しく遊牝む
ミュンヘンのポルノショップを出たら虹
よく肥る蟻の六肢の黒光り
豚千頭湯がける鍋や大ごきぶり
冷房がキツいウォトカは九杯目
モスクワに煙草をたからるる夕立
はや朝を濡れきちこうの野の行者
焼け跡の炭へと黒き蜻蛉は
白蟻の尻のほのかに柿の色
落つる萩蒼し落ちゆく萩赤し
ひきつつてちぢむ椿の実のちやいろ
蝶は秋従え翅の重し重し
栗はなぜ仇討ちに身を投じたか
失職や秋刀魚の骨は軽く折れ
速贄やけたけた笑ふやうに脚
樹と伽羅の伽藍へ秋の風と入る
刃を吸うて水蜜桃の輝くよ
元朝の光に涸川を歩く



正人くんは、いまはまだ作家としてよりもイベント運営、愛媛の俳句タレントとしての活躍のほうが表立っているように見える。
ただ、近年北斗賞や俳壇賞などの選考で結果を遺しており、作家としても少しずつ頭角を現しつつある。
年齢は近いが、作風の違いや単純に距離の問題で実際会う機会が少ないこともあり、動向の気になる一人である。

彼は俳句の国・愛媛で、俳句の伝道者として奮闘し苦闘する母・夏井いつきを間近に見て育った(現在の「成功」に至るまでの苦労は大変なものであったと伝聞する)。
それでもなお俳句の道を選んだ彼の作品には、いつも穏やかな余裕と静かな決意が漂っているように見え、それが私にはとてもまぶしい。

小論には、おなじく愛媛の出身で尊敬する論客である、橋本直氏にお願いした。
お忙しいなか、「まったく誉めない可能性もありますが、よいですか?」と、厳しくも真摯な応諾メールをいただき、その評の行方が私も楽しみである。


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